AWS · Field note

SageMaker Unified Studio の位置付けと SageMaker AI Studio との使い分け

next-generation SageMaker のリブランドで再編された Unified Studio が束ねるワークロード範囲、Domain / Project という管理単位の設計、SageMaker AI Studio との使い分け判断を整理します。

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tgeas
目次
  1. next-generation SageMaker とは何か ── リブランドと名称の整理
  2. Unified Studio が束ねるもの ── SQL・データ処理・ML・GenAI・ガバナンスの統合範囲
  3. Domain・Project・Blueprint ── Unified Studio の管理単位を理解する
  4. Unified Studio を選ぶ前に確認したいこと ── 移行・名称・料金の未確定事項
  5. Unified Studio と SageMaker AI Studio の使い分け ── 公式指針と実務判断
  6. まとめ ── 統合 IDE を選ぶ設計判断の核心
  7. 参考文献

本記事では、next-generation SageMaker の総称ブランドに位置付けられる Amazon SageMaker Unified Studio と、既存の AWS データ基盤との使い分けを整理します。リブランドで再編された名称体系、統合ワークロードの範囲、Domain / Project の管理単位、SageMaker AI Studio との使い分け指針、料金と移行パスを順に取り上げます。各論点を把握したうえで、Unified Studio への集約が自チームのデータ共有要件と合致するかを判断しましょう。

next-generation SageMaker とは何か ── リブランドと名称の整理

AWS は 2024 年 12 月 3 日に「next-generation Amazon SageMaker」を発表しました。これは単なる機能追加ではなく、サービス名称と製品構成を大きく再編するリブランドです。

まず名称の整理から始めます。旧来の「Amazon SageMaker」という名称は、2024 年 12 月 3 日以降は 総称ブランド として再定義されました。公式ドキュメントは next-generation SageMaker を Unified Studio と Data and AI governance (= SageMaker Catalog) の 2 主要コンポーネント、および基盤の open lakehouse architecture で構成すると整理しています。本記事ではブランド名の対応を以下の表で整理します。

  • Amazon SageMaker AI ── 旧 SageMaker の ML 開発機能を継承した製品。その IDE が SageMaker Studio (旧称と区別のため「SageMaker AI Studio」と表記することが多い)
  • Amazon SageMaker Unified Studio ── 新設の統合 IDE
  • Amazon SageMaker Lakehouse ── 新設のデータ統合基盤
  • Amazon SageMaker Catalog ── Amazon DataZone を基盤として構築されたデータカタログ・ガバナンス機能 (DataZone は独立サービスとして並列存続)
旧名 (〜2024-12-02)新名 (2024-12-03〜)
Amazon SageMaker StudioSageMaker AI / SageMaker Studio (AI 内の IDE)
Amazon SageMaker (Studio 以外)Amazon SageMaker AI
(なし)Amazon SageMaker (= 総称ブランド)
(なし)Amazon SageMaker Unified Studio
(なし)Amazon SageMaker Lakehouse
(なし)Amazon SageMaker Catalog (Amazon DataZone を基盤に構築)

旧 Studio には「Studio Classic」という名称も存在します。これは 2023 年 11 月 30 日に改称されたもので、ベースとなる JupyterLab 3 のメンテナンスは 2024 年 5 月 15 日に終了しています。今後の新機能開発は SageMaker AI Studio / Unified Studio に集中します。移行先としては SageMaker AI Studio (新 SageMaker Studio) が現実的な選択肢で、その上で Unified Studio に集約するかどうかを要件に応じて判断する流れになります。

「AI Studio」という単独の製品名は公式に存在しない点に注意が必要です。本記事でも「SageMaker AI Studio」と表記します。

Unified Studio が束ねるもの ── SQL・データ処理・ML・GenAI・ガバナンスの統合範囲

AWS の公式定義によると、Unified Studio は「データ、アナリティクス、AI、ML の各 AWS サービスをひとつの開発体験に集約した統合 IDE」です。

a unified development experience that brings together AWS data, analytics, AI, and ML services. It provides a place to build, deploy, execute, and monitor workflows from a single interface.

出典: Amazon SageMaker Unified Studio

2024 年 12 月 3 日にプレビューを開始し、2025 年 3 月 13 日に一般提供 (GA) となり、現在は東京リージョン (ap-northeast-1) を含む 15 リージョンで利用できます。

Unified Studio が内部で統合する AWS サービスは、EMR / Glue / Athena / Redshift / MWAA / Amazon Bedrock / SageMaker AI と多岐にわたります。既存の Athena / Redshift は SQL アナリティクス領域、Glue は ETL とガバナンス領域、SageMaker AI は ML / GenAI 領域として Unified Studio に統合されています。機能領域ごとに整理します。

SQL アナリティクス

Athena と Redshift をエンジンとして選択できます。複数の SQL セルをひとつのノートブック形式で管理する Querybook や、Amazon Q Developer による自然言語から SQL への変換も利用できます。

データ処理 (ETL)

Spark / Trino / EMR / Glue / Athena に接続でき、コードなしで ETL を構築できる Visual ETL を備えます。2026 年 3 月 9 日には Visual ETL のデータプレビュー機能 v2.0 が提供され、即時プレビューが可能になりました。

同年 3 月 3 日には AWS Glue 5.1 (Spark 3.5.6 / Python 3.11 / Apache Iceberg 1.10.0) が統合されています。

Serverless Notebooks (SageMaker Data Agent)

Athena for Spark を基盤とし、SQL / Python / 自然言語を混在させて記述できます。データエージェントが自然言語の入力から SQL やコードを生成します。東京リージョンでは 2026 年 4 月 1 日から JP-CRIS (Japan Cross-Region Inference) に対応し、推論処理が日本地域内で完結するようになっています。

ML 開発

SageMaker AI の機能の大部分を Unified Studio 内で利用できます。JupyterLab (SageMaker Distribution) と Code Editor (VS Code OSS ベース) の両方が使えます。2025 年 10 月 11 日には VS Code のリモート接続、2026 年 3 月 25 日には Cursor のリモート接続にも対応しました。

ただし、RStudio・Canvas・Feature Store・共有スペースでのリアルタイム共同作業は Unified Studio ではなく SageMaker AI Studio が推奨される点は後述します。

GenAI アプリ開発

Amazon Bedrock を統合しており、チャットエージェントアプリや Flow アプリをノーコード / ローコードで構築できます。Knowledge Bases / Guardrails / Agents / Flows / Evaluation / Prompts / Playground を利用できます。

スタンドアロンの Amazon Bedrock との使い分けとして、Unified Studio は「ガバナンスを伴ったローコード / ノーコード環境」として位置付けられます。最新の Agents / Flow / Guardrail の拡張機能や Bedrock SDK を直接使いたい場合は、スタンドアロンの Bedrock が推奨されます。

ワークフロー (Visual Workflows)

MWAA (Managed Workflows for Apache Airflow) を基盤とした Visual Workflows を内包し、約 200 のオペレーターを利用できます。MWAA Serverless への対応も進んでおり、IAM ドメインでは 2025 年 11 月 21 日、IdC ドメインでは 2026 年 4 月 7 日に対応しています。

ガバナンス (SageMaker Catalog)

Amazon DataZone を基盤として構築されており、DataZone と同等のガバナンス機能を SageMaker Unified Studio の統合 UI から提供します。Amazon DataZone は独立サービスとして並列存続しており、既存の DataZone ドメインは SageMaker ドメインへアップグレードしなくても従来どおり継続利用できます。提供機能は、アセットの publish / subscribe、ビジネス用語集、メタデータフォーム、データリネージュ、データ品質スコアです。

2025 年 10 月 12 日から Glue Catalog からのリアルタイムメタデータ取り込みに対応しています。

2026 年 3 月 3 日からは Collibra との双方向メタデータ同期、および Atlan・Alation への一方向メタデータ取り込みに対応しました。

Amazon Q Developer

全ユーザーに Free Tier が提供されます。2025 年 9 月 8 日からは MCP サーバー統合により、プロジェクト内のデータ・コンピュート・コードを認識した状態での支援が可能になっています。

Domain・Project・Blueprint ── Unified Studio の管理単位を理解する

Unified Studio の管理構造は、大きく 3 層で構成されます。

Domain は組織単位です。組織全体をひとつの Domain で運用することも、部門ごとに複数の Domain を持つこともできます。Domain の下には Domain Unit (ビジネスユニット・チーム単位) を設けられます。

Project は作業整理の単位です。ビジネスコンテキストと協業の境界、パーミッション境界をひとつの単位として扱います。チームが共同で取り組む分析や ML 開発のプロジェクトが、この Project 単位で管理されます。

Project を作成する際に選べるテンプレートが Project Profile で、以下の 4 種類があります。

  • All capabilities (全機能)
  • SQL analytics (SQL アナリティクス特化)
  • GenAI app development (GenAI アプリ開発特化)
  • Custom (カスタム)

Blueprint は CloudFormation で定義されたツール・サービスの組み合わせ定義です。Project Profile の実体として機能します。

Space はユーザー個人のワークスペースです。1 アカウントあたり最大 6,000 の同時 Space が利用でき、2025 年 5 月 30 日の拡張で上限が引き上げられました。

SageMaker Lakehouse と Lake Formation の役割

SageMaker Lakehouse は、Glue Data Catalog に Apache Iceberg REST API インターフェースを追加した基盤です。S3 上のデータレイク、Redshift、外部ソースをまとめて扱えます。Lakehouse 自体の追加料金はなく、基盤となる各サービスの料金が発生します。

クエリ実行時の細粒度アクセス制御は Lake Formation が担います。Athena for Spark のテーブル制御も 2025 年 11 月 21 日から Lake Formation の管理下に置けるようになっています。

Zero-ETL 統合 (Salesforce / SAP / 運用 DB → Lakehouse) に対応しており、既存データをコピーせずに Lakehouse に取り込めます。フェデレーテッドクエリ (DynamoDB / BigQuery / Snowflake) も利用でき、既存データソースを移行せずにそのまま参照できます。

Unified Studio を選ぶ前に確認したいこと ── 移行・名称・料金の未確定事項

Unified Studio の導入を検討する前に、いくつかの点を確認する必要があります。

Studio Classic からの移行パス

Studio Classic から Unified Studio への直接移行ガイドは、本記事執筆時点 (2026-05-06) の公式ドキュメントで確認できていません。まず SageMaker AI Studio への移行を経るのか、直接 Unified Studio に移行できるのかは公式ドキュメントを個別に確認してください。

一方、DataZone から SageMaker ドメインへのアップグレードパスは 2025 年 6 月 2 日から提供されています。既存の DataZone 環境で構築したメタデータフォーム・用語集・サブスクリプションは継続利用できます。

料金モデルの全体像

Unified Studio の IDE 機能・プロジェクト管理・ドメイン管理自体に追加料金はありません。ただし、内部で呼び出す各 AWS サービス (Athena / Redshift / EMR / Glue / Bedrock / SageMaker AI) の従量課金が積算されます。

SageMaker Catalog の料金は DataZone と同一の体系です。以下の単価は AWS DataZone 料金ページから取得した値です。東京リージョン (ap-northeast-1) 個別の値かどうかは公式料金ページで再確認してください。

項目単価無料枠
リクエスト$10 / 100K リクエスト4,000 リクエスト / 月
メタデータストレージ$0.4 / GB20 MB / 月
コンピュート$1.776 / unit0.2 units / 月
AI レコメンデーション (入力)$0.015 / 1K トークン
AI レコメンデーション (出力)$0.075 / 1K トークン

実際の見積もりは AWS DataZone 料金ページ で最新値を確認してください。

Unified Studio と SageMaker AI Studio の使い分け ── 公式指針と実務判断

AWS が公式に示している使い分けの指針をまず確認したうえで、実務上の判断材料を整理します。

AWS 公式の使い分け指針

Unified Studio を選ぶ場合: データ探索・ETL・SQL / ML・GenAI 開発・ガバナンスを横断して統合・共有したいとき。

SageMaker AI Studio を選ぶ場合: ML の準備・構築・訓練・デプロイ・管理に専念したいとき。あるいは RStudio・Canvas・Feature Store・共有スペースでのリアルタイム共同作業が必要なとき。

両者は強制的にどちらかに移行するものではなく、併存して利用できます

判断軸の整理

使い分けの根本的な問いは「チーム横断でデータとガバナンスを単一 IDE の境界内で共有したいか」に集約されます。

データエンジニア・アナリティクスエンジニア・ML エンジニアが同じ Project に属し、異なるツールの成果物を統一されたガバナンス管理下で共有したいケースがあります。その場合、Unified Studio の Domain / Project 構造はその要件に直接対応します。

一方、ML チームが独立してパイプラインを管理しており、Feature Store や Canvas を中心に運用している場合は、SageMaker AI Studio をそのまま継続する方が摩擦が少なくなります。

以下の比較表に判断の目安をまとめます。

判断軸Unified StudioSageMaker AI Studio
対象ワークロードSQL + ETL + ML + GenAI + ガバナンスを横断ML 専用 (準備〜デプロイ〜管理)
チーム構成データ・ML・GenAI の複数職種が協業ML チームが独立運用
Feature Store非推奨推奨
RStudio非推奨推奨
Canvas非推奨推奨
リアルタイム共同作業 (Shared Spaces)非推奨推奨
GenAI アプリをローコードで構築推奨非推奨
データガバナンス (Catalog 統合)推奨非推奨
Visual ETL / Airflow推奨

Google Cloud との対比

参考として、Google Cloud のアーキテクチャと比べると構造上の違いが明確になります。Google Cloud では Vertex AI Studio (GenAI) と BigQuery Studio (SQL / 分析) が 別々の IDE として分離しています。AWS の Unified Studio は SQL・ML・GenAI を 単一 IDE に統合している点が設計上の大きな差異です。

データカタログ・ガバナンスの役割では、Google Cloud の Dataplex と SageMaker Catalog (旧 DataZone) が近い位置付けになります。

まとめ ── 統合 IDE を選ぶ設計判断の核心

SageMaker Unified Studio は「データ探索・ETL・SQL / ML・GenAI 開発・ガバナンス」を Domain / Project という単一の境界で束ねるワークロード横断統合の設計選択です。

既存の Glue / Athena / Redshift / SageMaker AI Studio を継続するか Unified Studio に集約するかの判断軸は、チーム横断でデータとガバナンスを単一 IDE の境界内で共有したいかどうか に尽きます。

複数職種が同じデータ基盤上で協業し、SQL・ETL・ML・GenAI の成果物を統一されたガバナンス管理下に置きたい場合、Unified Studio の Domain / Project 構造はその要件に直接対応します。

一方、ML チームが Feature Store・Canvas・RStudio・リアルタイム共同作業を中心に独立運用している場合は、SageMaker AI Studio を継続する方が現実的です。両者は強制的な移行関係になく、要件に応じて使い分けられます。

Unified Studio 自体の IDE 機能に追加料金はありませんが、内部サービスの従量課金が積算されます。SageMaker Catalog の料金は東京リージョンの値を公式料金ページで個別に確認してください。

参考文献


Author
tgeas

大阪の SIer 勤務。Google Cloud Partner Top Engineer 2026 / 2025 JAPAN All AWS Certification Engineers。インフラ・ネットワークからデータ活用と生成 AI 活用支援まで幅広く対応。